日本消化器病学会・甲信越支部

第42回 日本消化器病学会甲信越支部例会

胃・小腸(T)

4.Helicobacter pylori陽性の成人鉄欠乏性貧血に対する除菌療法の有用性
1独立行政法人 労働者健康福祉機構 新潟労災病院 内視鏡診療センター
森 健次1、麻植ホルム 正之1、前川 智1、太幡 敬洋1、合志 聡1
【目的】鉄欠乏性貧血は若年女性を中心に最もよく見られる血液疾患の一つであり、原因として慢性消化管出血、婦人科疾患、食事性鉄欠乏(偏食やダイエット)、吸収不良症候群、慢性炎症に起因する網内系での取り込みの亢進、思春期の急激な成長などが上げられている。近年これまで難治性・再発性と考えられていた鉄欠乏性貧血患者の中に、Helicobacter pylori(以下H.pylori)(感染を原因とする症例が存在することが報告されている。H.pylori陽性の成人鉄欠乏性貧血患者に対して除菌療法を行い、その有用性について前向き検討を行った。【対象】上部消化管内視鏡検査と便潜血検査で消化管疾患が否定され、H.pylori感染が証明された成人鉄欠乏性貧血患者【方法】鉄欠乏性貧血と診断された患者に上部消化管内視鏡を行い、迅速ウレアーゼテストと改訂シドニー分類に基づく5点生検によりH.pylori感染の証明を行った。除菌療法前、除菌終了後1, 3, 6, 12ヶ月目の血算, 血清鉄, フェリチン, ペプシノーゲンT/U比を測定した。除菌終了後12か月目に上部内視鏡検査と胃液pHの測定を行った。【結果】3症例でHb、血清鉄及びフェリチンに上昇傾向が認められた。ペプシノーゲンT/U比は上昇傾向を示し、病理組織所見からも萎縮粘膜の改善が認められた。【結論】H.pylori陽性の成人鉄欠乏性貧血患者に対する除菌療法は、萎縮した胃粘膜を改善させ、貧血に対して有用な治療となり得る可能性が示唆された。
5. 術後17年目に多発骨転移が出現した胃癌の1例
飯田市立病院 外科、2飯田市立病院 消化器内科、3飯田市立病院 病理、4飯田市立病院 放射線科
村山 幸一1、金子 源吾1、平栗 学1、堀米 直人1、秋田 倫幸1、海野 洋2、岡庭 信司2、中村 喜行2、持塚 章芳3、伊藤 信夫3、渡辺 智文4、岡庭 優子4
症例:58歳、女性。主訴:左腰背部痛。既往歴:胃癌:1989年10月(42歳時)人間ドックにて胃の異常を指摘され精査。上部消化管内視鏡検査で胃角部、後壁寄りにIIc様病変が認められ、生検でgroup5、por と診断された。同年12月幽門側胃切除術(ビルロート1法再建)施行。病理所見では大きさ10x28mm, A , 3型, sig., ss, ly2, v1, n1(+), StageIIであった。 現病歴:2006年1月左腰背部痛が出現し、当院整形外科を受診した。左肋骨、脊椎に転移の疑いあり、疼痛緩和および原発巣の検索を目的に当科に紹介された。血液検査ではALP, CEA, 1-CTPの上昇が見られた。胸・腹部CTおよびPET-CTなど精査の結果、頭蓋骨、左右肩甲骨、左第7肋骨などに多発骨転移巣が認められたが肺、残胃、肝、膵、腎など胸・腹腔内臓器に異常所見は認められなかった。CTガイド下にて左第7肋骨転移巣の生検を行い、病理組織学的に検討したところ、AB-PAS染色で胞体内に粘液を含むsignet -ring cellが認められ、また、MUC5AC(胃表層粘液細胞ムチンのコア蛋白)およびMUC6(胃腺粘液細胞ムチンのコア蛋白)陽性癌細胞も認められ、胃癌の転移と考えられた。TS-1、CDDP、CPT-11による化学療法を行なったが多発骨転移出現後1年3ヵ月で死亡した。経過中ほかに原発と考えられる病変は出現しなかった。本例は術後17年目に多発骨転移が出現した胃癌例で、稀な症例と考えられる。文献的考察を加えて報告する。 今回我々が経験した症例は、早期胃癌にて発見され約3年半にわたり計7回の上部内視鏡検査を行った。その間に陥凹型から隆起型へ形態が変化した1例を経験したので報告する。
6. 重複消化管が示唆された小腸憩室穿孔の1例
1長野県立木曽病院 外科、2長野県立木曽病院 内科、3信州大学医学部 病理学教室
小山 佳紀1、大町 俊哉1、久米田 茂喜1、高橋  俊晴2、小松 健一2、飯嶌 章博2、下条 久志3
【緒言】今回我々は,重複消化管が示唆された小腸憩室穿孔の1例を経験したので報告する。【症例】87歳女性。子宮筋腫の手術歴あり。2007年10月22日,朝より腹痛あり。改善しないため夕刻になり当院救急外来を受診した。体温37.6度,腹部は平坦・軟であり,軽度の圧痛を認めた。白血球16100/μl,CRP4.5mg/dlと上昇を認めた。腹部単純レントゲンでは,明らかな腹腔内遊離ガス像は認めず。入院し経過観察していたところ,翌10月23日に腹膜刺激症状を認めるようになり,腹部CTにて腹腔内遊離ガス像が証明され,消化管穿孔の診断で,緊急手術を施行した。開腹すると腹腔内全体に広がる膿性腹水を認め、腹腔内を検索すると、骨盤底に、7.5cmの嚢状に突出した小腸の一部(腸間膜付着部反対側)が位置しており,その一部に小さな穿孔部位を認めた。表面には白苔が付着していた。同部位の小腸を切除し端々吻合を行い,腹腔内を十分に洗浄したうえで,左右横隔膜下とダグラス窩にドレーンを留置し,手術を終了した。切除標本では,腸管に狭窄部位と考えられる箇所を伴い、そこから嚢状に突出した部位を認め、形態的に憩室と判断し、組織学的には腸壁の全層を含んでおり真性憩室と考えられた。しかし,位置的にはMeckel憩室とは異なり,重複消化管(小腸重複)の定義を満たす病変と考えられた。【考察】小腸穿孔は,全消化管穿孔の22〜25%を占め,原因は外傷,憩室,炎症,潰瘍,腫瘍,血流障害(血管病変),イレウスなどと多岐に渡る。消化管憩室に関しては,小腸憩室は比較的稀で,先天性・後天性を含め1〜2%との報告がある。いわゆる消化管の"嚢状に突出したもの"="憩室"の一部のものと、形成異常としての"重複消化管",及び,"消化管嚢胞",が同一の病変を意味し報告されている場合がある。本症例を通して,小腸憩室や重複消化管(小腸重複)に関して,若干の文献的考察を加え発表する。
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